おもてなし ―その2―

ハーブティーを薬草ととらえ、薬用としてしか飲用しない習慣のあるイギリスでは、ゲストに対して「ハーブティー」を出すことは殆どないそうです。これは、イギリスの友人が教えてくれた事なのですが、理由はひとつ「美味しい、という感覚で飲むことがないから」だそう。

そして、その友人の云う「美味しくない」ハーブティーが日本という国では「おしゃれ」な飲物という「別もの」として存在しているという事にも「日本って凄いね。」です。友人曰く「日本人は商売上手」です。

確かに市場では辟易するくらいの過剰な付加価値をつけた商品を目にする事もありますが、それは一部でしょう。
個人差はあるにせよ日本人って心が動かない付加価値にお金は払いません。ですが、お茶や単なる水などどんなものでも「素敵」に演出して提供されると心が何故か動いてしまうことがあります。例え原価が解っていても、です。それはきっと「おもてなし」の遺伝子をもつ日本人が「おもてなし」の心に触れた瞬間なのかも知れません。

少し話が哲学的になってしまいましたが、友人が「美味しくない」というハーブも、「そんな事ないわ。大好きな貴方の為に淹れたのよ。飲んでみて。」と心を込めて淹れたならきっと美味しいと感じ取ってくれるお茶になるはずです。

色々なハーブがありますが、個人的にあまり手が伸びないハーブも存在します。
その一つがレモングラスになりますが、実はこのレモングラスが最初に飲んだ「フレッシュ(生)ハーブ」でありハーブティーの素晴らしさを確信したきっかけになったハーブでもあります。一見矛盾する話ですがそのエピソードはこうです。
それは19年程前に仕事で訪れていた沖縄での出来事です。
全ての沖縄の人がそうだとは申しませんが、私が関わった方々の生活習慣は本当に驚くことばかり。真夜中でもステーキを平気で平らげる。しかも量が半端じゃないほど多い。
そんな沖縄の遅い夕食(あるいは早すぎる朝食)を彼らに付き合っての朝。訪れた仕事先の事務所で私の胃の不調を察した女の子が、さっと庭に出て雑草をひと握り根元からバッサリ刈ったあと給湯室の方に戻っていきました。そして数分経って、何やら良い香りがする湯気が立ち上るティーポットを私の前におきました。

見ると、先ほどの雑草(のように見えていた当時)が細かく刻まれたものが入ったティーでした。
これが「レモングラス」です。その香りに惹きつけられるように一口そして二口と飲んでいくにつれ重く辛かった胃の症状がどんどん薄れていくのを感じ、久しぶりに薬以外のもので症状を緩和してくれるハーブティーの出会いに感動したものです。

今は胃がそこまで持たれる食べ方はしない為レモングラスは私にとっては必要がないハーブになってしまっていますが、その時のティーのある空間は今でも忘れません。透明感あふれるグリーンのティーの色。立ち昇る湯気の爽やかな香り。
可愛い笑顔で「このティーはレモングラスというハーブで胃がもたれた時に飲むと本当によく効いていいですよ。ウチナンチュの必需品です。ぜひお仕事頑張ってください。」香りと味もそうですが、ハーブの用途やその心さえも深く心に刻まれています。

これもひとつの素敵なおもてなし効果ですね。

(文責 いわはし)

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